Dr.Andyの活動記録

モンゴル火災救援活動

モンゴル平野を襲った悲惨な大火災で、協力して

治療活動にあたった日本と香港のロータリアン達

ロシアと中国に挟まれたモンゴルは、日本の約4倍の面積をもち、モンゴル高原の大部分を占めています。大陸性気候で寒暖の差が激しく、馬や羊などの牧畜業が主な産業となっています。 モンゴルにロータリークラブができたのは1995年のことで、その推進者となったのがブーシェットさんという人です。彼はハンガリーのブダペスト大学に留学し、医師の資格を持ちながらも現在はビジネスマンとして活動しています。私は'93年に香港のあるロータリークラブの会に出席した時に、カナダの友人にブーシェットさんを紹介されました。彼は仕事で香港を訪れていましたが、ロータリークラブの奉仕活動に共感し、モンゴルにもクラブを作ろうと奔走し、香港のロータリークラブの拡大活動により、また様々な人の協力を得て'94年にモンゴルの首都であるウランバートルに、モンゴル初のロータリークラブを誕生させ、翌年正式に国際ロータリーに承認されました。

ブーシェットさんはその初代会長でもあります。モンゴルに初めてロータリーが作られたお祝いとして、日本、香港、マカオ、台湾の各ロータリークラブが協力し合って、デンタルクリニックに必要な医療器具一式を寄贈しました。
その記念式典に私も出席し、この機会にモンゴルの様々な病院を視察しましたが、医療器具も古く、また先進国には既に見られないような病気で苦しむ患者さんが大勢いました。さて、'95年の暮れに香港で開かれたロータリーのある研究会で、ブーシェットさんに再会したのですが、この時彼からジャミヤン君という5歳の男の子の話を聞きました。ジャミヤン君はひどい火傷を負って、その瘢痕拘縮後遺症に苦しんでおり、何とか助けてもらえないだろうかという事でした。帰国後、早速私の友人知人に声をかけ、募金活動を行って薬や医療器具などを準備していたところに、モンゴルで大火災が発生したというニュースが飛び込んできたのです。

これは一大事だということで、モンゴルに行くまでの間に新たに準備を整えましたが、現地の状況がよく分かりません。緊急事態でもあり、時間もありません。とりあえず私たちは、友人の協力をもとに、限られた時間の中で300キロの医薬品・医療器具を集めました。重度の火傷を負った患者さんが大勢いる事は聞いていましたので、この程度の物資では足りないことは分かってはいましたが、緊急の為この救援物資を持ってモンゴルへと出発しました。その一方で、香港の香港中文大学のプリンス・オブ・ウエールズ・ホスピタン外傷センターのキング教授に、救援依頼のFAXを送って協力を仰ぎ、待機してもらっていました。草原の火災はたいへん恐ろしいものです。火は四方八方から攻めてきます。火を遮るものとてなく、人々は逃げ場を失い火にまかれてしまうのです。やっとの事で救出された人々は、次から次へと病院へ運ばれてきますが、運ばれる途中で亡くなってしまう人や病院で息を引き取る人も大勢います。私はウランバートルの病院で治療にあたりましたが、病院に着いた時は思わず目をそむけてしまいたくなるほどの悲惨な状況でした。まるで野戦病院のような有り様なのです。

火傷にしろ何にしろ、緊急の場合は最初の治療が肝心なのですが、圧倒的に薬が足りません。火傷した部分を消毒し、傷口をガーゼで覆うのが精一杯で、火傷の患者さんが絶対必要とする体液補給の点滴や抗生物質もほとんどなく、生命力の強い人は生き延びるといった状態でした。
通常ひどい火傷の場合は、傷が落ちついたら皮膚移植が行われます。移植をしないと、その部分の皮膚は萎縮してしまい、身体を動かすのにも大きな影響が出てしまいます。しかし今回のケースでは、皮膚移植も満足に行う事が出来ません。命が助かっても、歩行などの動作に支障をきたす人が大勢いました。これでは日常生活にも多大な影響を及ぼしてしまいます。治療をすればそれでいいというものではなく、リハビリが大切なのですが、香港のキング教授に尽力いただいて患者さんを香港に移送したり、またモンゴルの医師たちを香港に派遣して医療技術を学んでもらうなどのプロジェクトを組みました。私たちがモンゴルに滞在したのは僅か10日間ほどでしたが、救急救命活動を実施するためには、何よりも迅速な対応と緊密なパートナーシップが必要だということを改めて実感しました。

モンゴル火災救済医療物資(300kg)モンゴルウランバートル子供病院の子供たちへ衣類400枚以上寄贈
写真左:モンゴル火災救済医療物資(300kg)
写真右:モンゴルウランバートル子供病院の子供たちへ衣類400枚以上寄贈
モンゴルやけど救急救命手術を施すモンゴル人の家庭を訪問する
写真左:モンゴルやけど救急救命手術を施す
写真右:モンゴル人の家庭を訪問する
術後の子供たちと (モンゴル・ウランバートル 子供病院にて)ジャスアン君、 高度なやけどによる瘢痕拘縮
写真左:術後の子供たちと (モンゴル・ウランバートル 子供病院にて)
写真右:ジャスアン君、 高度なやけどによる瘢痕拘縮