蚊が媒介する病のひとつにデング熱があります。これは、主に熱帯・亜熱帯地方に多い急性の出血熱の一種です。ネッタイシマカが媒介するデング熱ウイルスによって感染し、悪寒、発熱、発疹、体の各部の痛み、出血などがみられ、とりわけ体力のない子どもや抵抗力のない人は時に命を落とす事もあります。
日本ではほとんどみられませんが、フィリピン、スリランカ、コロンビア、パナマ、ドミニカ共和国など、いわゆる亜熱帯ベルトでは各地で猛威を奮っています。いまのところ、デング熱のワクチンはなく、多くの人がこの病に苦しんでいるのです。ワクチンがないということはすべてのデング熱に対する免疫力が備わるというわけではなく、違うタイプのデング熱が発生することによって新たに罹ることもあるのです。特に、雨期になると蚊が大量に発生し、貧富の差に関係なく人々を襲います。エルニーニョ現象によって温暖化がさらに進んだ今年は亜熱帯地域を中心に、デング熱の発生率が高まっているという報告もあります。
例えば、フィリピンの貧しい地域では、屋根のトタンなどが飛ばされないように、古タイヤを重石がわりに屋根に乗せている家が数多くありますが、そのタイヤのうち溝に水がたまり、そこにボウフラが沸き、やがて蚊が発生します。通常ボウフラは汚れた水の中に発生しますが、デング熱を媒介するネッタイシマカはむしろ汚濁されていない、一見、見た目にきれいな水たまりから発生します。たとえば、雨水のたまった側溝の水たまりはもちろんのこと、雨水をためる水桶や部屋の中の花瓶の水にも蚊が発生するのです。つまり、水のあるところはどこでも注意が必要です。
デング熱の潜伏期間は4~8日で、最初のうちは悪寒がしたり、発熱を伴うなど風邪と非常によく似た症状があらわれます。しかし、症状が進むと出血し、やがて死に至るケースもあります。特に、子供やお年寄り、体の弱っている人などは命を落とす危険性が高いのです。
ワクチンがないために、デング熱に対抗するには蚊を避ける手段を講じる予防策が一番有効です。そのため、テレビなどのマスコミを通じてデング熱に対する正しい知識や予防策などの広報活動が重要になっています。ロータリーでは、世界各国のデング熱撲滅プロジェクトに協力し、現在さまざまな活動を展開しています。
例えば、コロンビアでは、ブカラマンガにおいて1985年からコミュニティ指導のデング熱予防運動がはじまり、マラリア予防運動とともに全国的に広まっていきました。デング熱に関するビデオや防止マニュアルなどの作成や、研究グループの育成もなされています。また、高校の生物学の授業でもデング熱が取り上げられるなど、衛生教育にも成果をあげています。また、ベリィーオ村においても広範囲な活動が展開されています。